鍼を刺すと、体はどう修復するのか?
鍼灸は「なぜ数千年も廃れずに」存在し続けるのか?
鍼と灸は、組織に小さな刺激を与え、体自身の修復反応を促します。それが、人々に支持され続けてきた理由のひとつです。
執筆・監修: 高野義道(院長)/ はり師・きゅう師国家資格 / 免許取得33年・開業28年 / 鍼灸の案内
効果には個人差があります。
Quick Answerズバリの回答
針を刺すだけでなぜ楽になるのか。要点だけ先にまとめます。
鍼灸は、組織に小さなキズや、灸なら軽いやけどの刺激を与え、体が「治そう」と反応することで、自然治癒力を引き出す医療です。祈祷やまやかしではありません。
鍼の刺し傷をきっかけに、細胞の入れ替えや組織の修復が始まります。これを繰り返すことで、痛みや不調が和らぐ方向へ向かうことがあります。ただし、効果の出方や期間には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
Movie動画で鍼灸の考え方を知る
文字だけではイメージしにくい方のために、当院の鍼灸治療を短くまとめた動画もご用意しています。
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Repair Flow修復フロー
— 鍼を刺すと、体の中で何が起きるか
鍼でできる「傷」、お灸でできる「やけど」。この小さな刺激から、体は修復を始めます。
針を体に刺すだけでなぜ変化が起きるのか。誰もが不思議に思いますが、体の仕組みとして説明できます。鍼をすると、生体に「傷」ができます。これを侵襲行為(体に変化をもたらす行為)と呼びます。身体は、人為的につけた鍼の刺し傷からも、自然に治そうとします。
まず、5つの要点
- 「鍼」では、組織に小さなキズをつくります。
- 「灸」では、組織に軽いやけど、またはやけどの一歩手前の刺激を与えます。
- そうしてできたキズややけどは、自分自身の力で修復します。これが自然治癒力です。
- 当院で重視しているのは、治療後のキズ・やけどの自己修復を起こさせることです。
- 病的な状態の組織に、適切な刺激を与え、細胞の入れ替えを促すことで、組織が健康な方向へ向かうことがあります。治療を重ねるほど、修復が進みやすくなります。
※ キズややけどを闇雲につくればよい、というものではありません。どこに、どの程度、どの方法で行うかは、学問・技術・経験に裏打ちされた判断が必要な、高度な施術です。
修復の流れ(患部の鍼傷が治るまで)
以下は、患部に鍼を打ったあと、傷が治っていく一連の流れです。専門用語には、読みやすい補足を添えています。
共通(鍼を打った直後〜)
- 患部に直接鍼を打ちます。鍼は非常に細いので、体への負担はごく小さいです。
- 体が刺激を受けると、予期しない細胞死(ネクローシス)が起きます。死にかけた細胞は、周囲に警告の物質を残します。
- 組織内部にわずかな出血が起きることもあり、皮下が一時的に青く見えることがあります。通常は心配ありません。
- 血小板が集まり、血管が収縮して出血が止まります。
- 免疫・炎症反応が起きます。警告物質によって白血球が集まり、さらにサイトカイン(炎症を起こす物質)が出て、周囲の組織の修復が進みます。鍼は細いので、影響範囲はごく狭いです。この段階で局所にむくみが出ることもありますが、見た目には分からない程度です。
- マクロファージ(死んだ組織を片付ける細胞)が、死んだ組織・細胞を取り除きます。
皮膚の場合
- 繊維芽細胞が、コラーゲンを主体とした肉芽(にくげ)組織による修復を始めます。
- 繊維芽細胞は、コラーゲン・ヒアルロン酸・エラスチンを作り、真皮の組織を再構築する細胞です。傷を負うと傷口に集まり、修復を始めます。
- 鍼の傷はきわめて微小なので、繊維芽細胞が増えすぎません。そのため、余分なコラーゲンや血管ができにくく、きれいに修復しやすいと考えています。
筋肉の場合
- 針の傷により、筋衛星細胞(サテライトセル)が活性化されます。通常は休止している細胞ですが、損傷を受けると免疫反応とともに動き出します。損傷した筋細胞の核も、前駆細胞になり得るとの研究もあります。
- サテライトセルが活性化すると、遺伝情報に従って細胞分裂が起き、増殖・融合して多核筋管細胞となり、さらに筋繊維として回復成長していきます。神経の再支配や血流の回復も伴います。
- このようにして、患部につけた傷が治癒します。
共通(治療を重ねる)
- ①〜⑫の流れを、治療ごとに繰り返します。繰り返すことで、患部組織の修復が進みやすくなります。
- 患部の組織が、病的な状態から健康な方向へ向かうことがあります。ただし、症状や体質によって経過は異なり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
※1 お灸は皮膚にやけどを負わせますが、微小なやけどであれば跡にならずにきれいに治ることが多いです。体の状態によっては水泡が大きくなり、跡が残ることもあります。症状によっては熱量の多いお灸をすえる場合もあり、そのときは跡が残ることがあります。詳しくは施術後の注意事項もご覧ください。
※2 やけどに限らず痕跡が残る場合、ヒトbFGF製剤(フィブラストスプレー)を使う方法もありますが、これは医師の行為であり、当院では行えません。当院では鍼灸の範囲内で対応します。
History数千年続く理由
鍼灸は、現生人類(ホモサピエンス)に支持され続けてきたから、今も残っています。
それは、鍼灸を受けることで体が楽になるから、廃れることもなく、現在に至るまでさらに発展し続け、西洋諸国をはじめ全世界でも盛んに行われるまでになった、というシンプルな理由だと考えています。
よって今後も、廃れることなく発展し続けるものと思われます。当院の理念でも触れているように、痛みの奥にある原因に向き合い、自分自身の自然治癒力で健康な状態へ戻していく——その考え方の根っこに、この修復の仕組みがあります。
Director's View院長の考え方 — 東洋医学と「気」
以下は、院長 高野義道の見解です。他の鍼灸師とは意見が異なる場合があります。
鍼灸治療は、祈祷やまやかしの類だと思われている方もいらっしゃいます。原因のひとつは、「気」などの概念が分かりにくいからではないかと思います。
しかし、科学が十分でなかった時代に、数千年の歴史のなかで経験医術として仮説を立て、臨床で確かめ、現象から学問に成長させた結果が、東洋医学(鍼灸医学)です。実際に優れた医学ですが、経験的に構築された東洋哲学に基づく施術になるため、一般的には難解な用語が多く、理解されにくい面もあります。
現在、「気」の存在は科学的には実体として認められていません。現在の医学は、人体の生理機能を正確に説明する学問ですが、昔はそれが分からなかった。本当の生理現象から仮説を立て、理論化し、施術を重ね、結果から仮説を微調整する——それを数千年繰り返し、学問にしてきたのではないか、と私は考えています。
仮説の積み重ねで造られた東洋医学も、数千年たった今ではかなり微調整が進み、人体の生理機能に働きかけるレベルに達しているのではないか、と私は考えています。
誰でも納得しやすい説明として
そこで、鍼灸施術について、誰でも理解しやすい形の説明として、次のようにお伝えしています。
「鍼灸施術を受けることで、組織にごく小さな傷がつく。その傷ついた組織は、体が勝手に修復する。その修復のために起こる体のさまざまな反応が、自然治癒力を高めている。」
組織の修復過程の詳細は、上の修復フローに書きました。
私が鍼灸医学に36年(18歳から今ままでの)間取り組んできたなかでたどり着いた考え方です。他の鍼灸師とは意見が異なる場合もありますので、何卒ご了承ください。
FAQよくある質問
鍼灸の仕組みや、当院のページの見分け方についてのご質問です。
- 鍼灸はなぜ数千年も続いているのですか?
- 人々に支持され続けてきたのは、鍼灸を受けると体が楽になるからです。祈祷やまやかしではなく、体が自分で治そうとする反応を促す医療として、今も世界中で行われています。
- 「気」が科学で証明されていなくても、鍼灸は意味があるのですか?
- 東洋医学は数千年の経験から築かれた学問です。「気」という言葉が難しく感じられる一方、鍼や灸で組織に小さな刺激を与え、体が修復する反応を促す、という説明で理解できる方も多いと考えています。詳しい見解は本文の院長の考え方に書いています。
- 鍼を刺すと、体の中では何が起きますか?
- 鍼の刺し傷をきっかけに、細胞の入れ替えや組織の修復が始まります。灸は軽いやけどの刺激で、同じく修復反応を促します。詳しくは本文の修復フロー(14段階)をご覧ください。効果の出方には個人差があります。
- このページと理念・施術方針ページの違いは何ですか?
- このページは、鍼灸が効く理由(修復フロー)と数千年続く理由を説明しています。理念ページは痛みの捉え方や薬と鍼灸の役割、施術方針ページは鍼灸一筋のこだわりや国家資格について書いています。
- 宮崎で鍼灸を受けたいのですが?
- 宮崎市大塚台の当院では、エコー画面で問題の場所を見ながら鍼の先を届かせる施術を中心に行っています。ネット予約は「はじめて」からお選びください。会員価格の目安はしっかりエコー鍼灸 5,500円〜(税込)です。詳しくはエコー鍼灸や料金表をご覧ください。