ムチウチとは
ムチウチ(頸椎捻挫)とは、頸椎(首の骨)同士をつなぐ関節が無理な運動を強いられ、関節包や靭帯などの軟部組織が損傷した状態です。
頸椎捻挫では交通事故などによる急激な頸椎の運動によって、椎間関節(首の骨同士をつなぐ関節)のみならず、前縦靭帯、後縦靭帯、黄色靭帯、棘間靭帯などの、靭帯や椎間板などの損傷をきたす症状です。
また、変形性頸椎症や後縦靭帯骨化症などが存在している時には、これらを増強させることもあります。
(※前縦靭帯、後縦靭帯、黄色靭帯、棘間靭帯とは、首の骨、脊髄の通る管である「脊柱管」を支える靭帯のこと。)
頸椎捻挫は、追突事故、正面衝突、急停車などによって起こります。
(追突された時)
追突された際に、体は前方に移動しますが、頭部は静止の慣性によって取り残されるので結果として頸部が過伸展(後に強く曲がる)し、次に、その反動で屈曲(前に強く曲がる)して、頸椎周囲の軟部組織の損傷を起こします。
(衝突・急停車の時)
衝突や急停車の際は、追突されたときとは逆に、最初に頭部が運動の慣性によって前進するので頸部が過屈曲(前に強く曲がる)し、次にその反動で伸展(後に強く曲がる)して損傷を起こします。
このようにして起こった頸椎捻挫がムチウチ損傷(むちうち症)といわれる症状です。
頸椎捻挫・ムチウチの症状は、頸部の疼痛(自発痛、運動痛)、筋緊張、運動制限などが起こり、時には上肢(腕から手にかけて)の痛み、しびれ、脱力感を伴います。
ムチウチ損傷では、受傷直後に頸部痛、頭重感、悪心などの症状を起こすことが多く、その後しだいに頭痛、頸肩部のこり感、上肢の痛み、しびれ、脱力感などが出現し、また、めまい、耳鳴、嘔吐、眼精疲労などの多彩な症状が出現してくる場合が多いです。
肩から上肢の症状は、神経根部の浮腫(むくみ)や腫脹(はれ)などによる圧迫によって起こる場合が多いです。
また、ムチウチ損傷では衝撃が上位頸椎に集中する傾向が強く、その結果、大後頭神経痛(筋緊張型の頭痛の一種で、当院では神経頭痛とも表現しています)や眼窩(めのくぼみ)から前頭にかけての三叉神経第1枝領域の疼痛をきたすことがあります(上位頸髄の中に三叉神経核の一部が存在するためと考えられる)
脊髄症状(脊髄損傷の時などに起こる症状)が現れることは少ないですが、変形性頸椎症や後縦靭帯骨化症などがすでに存在していた場合には、脊髄圧迫が増強して脊髄症状を呈することもあります。なお、靭帯が損傷されている場合には、不安定椎(頸椎間の安定性が障害された状態)に移行しやすといえます。
不安定椎状態が続くと椎間板の膨隆、ヘルニアの合併、椎弓の黄色靭帯の肥厚、骨棘の形成などにより神経を圧迫するようなことがあります。
こうなると、ちょうど脊柱管狭窄症と同じような状態にあると考えられ、脊柱管狭窄症の治療が必要になることがあります。
ムチウチが、なぜ鍼灸治療で改善されるのか
それは、鍼灸治療により、頸椎同士をつなぐ関節と、その周囲の軟らかい組織の損傷や、それに伴うむくみなど徹底的に改善させ、同時に末梢神経に生じている神経圧迫障害(絞扼障害)を取り除く事ができるからです。
なぜ、そのような事ができるのかと言えば、・・・。
ムチウチは、なぜ「辛すぎる」のか?
頸椎(首骨)周囲の筋肉・靭帯などの軟らかい組織の広範囲に及ぶ重い損傷や、頸椎間にある椎間関節と呼ばれる関節が捻挫状態にあるために関節周囲の軟らかい組織も広範囲に重く損傷しています。
首は重い頭を支えています。
そして、日常生活では常に首を動かし視覚から情報収集しています。
よって、首の運動量は凄まじいものなります。
だからムチウチはつらいのです。広範囲に重い損傷を負っているにもかかわらず、頭を支えたり、首を動かしたりするからです。
従いまして、損傷の回復には相当な時間がかかる訳です。
ただ、広範囲におよぶ重症損傷それ自体は、時間がかかるものの時の経過とともに自然治癒します。
ところが、広範囲に及ぶ重症損傷が発生してから自然治癒するまでの時間が非常に苦痛なので、
その苦しい時間が長ければ長いほど、筋肉が緊張して、血行も悪くなりどんどん病的に固くなっていきます。
つまり、広範囲の重症損傷が修復された後も、病的な筋肉の固さは残るわけです。
ここから特に理解が必要なのですが、
筋肉が病的に固いという事は、首にかかる衝撃を筋肉が吸収しないという事です。
という事は、椎間関節、椎間孔、椎間板、脊柱管などに過度の負荷がかかるようになるわけです。
こうなったら首はたまったもんじゃありません。
「つらくて」「つらくて」たまらないのです。
1)まず鍼灸で、頸椎や、頸椎と頸椎の間にある関節の周囲の「軟らかい組織に起こった炎症」を取る!?
ごく初期の段階では、炎症が強いために、まずは炎症をとる治療を行います。
まず、炎症を押さえる強力な作用のある「副腎皮質ホルモン」を増やしてあげれば良いのです。
具体的には、鍼灸治療を行うことで体内の生理作用の一つである副腎皮質ホルモンの分泌量を微増させるための副腎皮質活性化処置を行い、副腎皮質ホルモンの分泌量を微増させます。
この処置を行うと炎症が治まるのです。炎症が治まるということは、副腎皮質ホルモンの量が増えたからにほかならないと言い換えることができると私は考えていますが科学的には今後の研究で明らかになることを望んでいます。
副腎皮質ホルモンとは、皆様ご存知のステロイドホルモンです。
ステロイドホルモンには、
人工ステロイド薬(ステロイドホルモンの作用を持つ合成薬)と、
「人体に害の無い・体内生成ステロイドホルモン(天然)」があります。
※このステロイドに対する表現の使い分けは、あくまでも私の簡易的な使い分けによる一表現であるため、他者に適用できるものではありません。何卒ご了承ください。人工的に合成された人工ステロイド薬を投与した場合は、副作用が起こる事があります。だから医師の処方を守らなければなりません。
一方、人工ステロイド薬と違い鍼灸治療をすることで自分自身で造りだす「人体に害の無い・体内生成ステロイドホルモン(天然)」の量が微量に増えた場合は副作用が起こることはありませんので安心といえます。なお、鍼灸でつける傷は極めて小さいため自分自身で造られる「人体に害の無い・体内生成ステロイドホルモン(天然)」も微量であると考えられます。
では、なぜ鍼灸治療で「人体に害の無い・体内生成ステロイドホルモン(天然)」が増えるのかと言えば、体に傷を負わせたり、ヤケドを負わせたりして、故意に軽い炎症状態を作り出すことで、人間が生まれながらにして持つ傷の修復能力により治癒させようとする一環の一過程として、炎症を抑えるための副腎皮質という組織による抗炎症ホルモンである「ステロイドホルモン」の体内生成が促されるためです。
ただし、鍼灸治療のキズは微少であるため、その傷の量に応じた「人体に害の無い・体内生成ステロイドホルモン(天然)」の分泌量も微量であると思われますが、それでもムチウチには十分なほど強力に炎症を抑えてくれています。
なお、この方法はどんな痛みや炎症に対しても応用できます。
皆様が通常使うイブ・セデス・バファリン・ロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬を総称してNSAIDs(エヌセイズ)といいますが、それで痛みが消えない場合は、ステロイド性消炎鎮痛薬で対処することもあります。
ところが鍼灸治療では、体の生理作用として副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンの量を増加させることで痛みと炎症を抑えるのではないかと推測できることから、様々な疾患にも応用できる可能性を秘めているのです。
すごいと思いませんか!?
この副作用の無い無害ステロイド性消炎鎮痛鍼灸((無害)鍼灸ステロイド処置)!!・・。
このようにして(無害)鍼灸ステロイド処置(副腎処置)をすることで、初期のムチウチによる炎症は治まります。
更に、炎症の終息を見極めながら、放っておくと近い将来固くなるであろう筋肉とそれにより生じる神経圧迫症状に対しても早期に鍼灸治療を開始しますので、後遺症を残さずにきれいに治癒します。
このように、「炎症に対する鍼灸」、「筋肉の硬化に対する鍼灸」、「神経圧迫による神経症状に対する鍼灸」の同時施術により、早期の治癒が可能になります。
2)次に、鍼灸で「ムチウチ」による病的で慢性的かつ不健康な状態を改善させる!?
慢性的なムチウチのことを正式には「頸椎捻挫後遺症」といいます。
受傷直後にムチウチ治療を開始した場合は前述の通り「(無害)鍼灸ステロイド処置」により炎症(痛み・熱・はれ・赤み)が早期に治まりますので、損傷の治癒とともに筋肉の状態も比較的早期に健康に戻りますのでムチウチは解決するのですが・・・、
問題なのは、ムチウチの治療をちゃんと行わなかったために慢性化している場合です。
慢性化しているムチウチでは、重い損傷そのものは治っているとしても、
あまりにもつらい期間が長期化しているために、
筋肉が血行不良を起し「ガチガチ」に凝り固り、
頸椎を支える力も低下し頸椎不安定症に進展します。
そうなると頭を支えることもままならなくなり、
起きているのが「しんどくて」「しんどくて」たまらなくなります。
また、固くなった筋肉は、
頸の脊髄から手に向かう神経をも締め付け、
頸腕症候群と言われる神経痛の症状を引き起こします。
さらに、
頸椎の横突起と呼ばれる部位には椎骨動脈という脳を栄養する大動脈が通っていますが、頸椎が不安定になると椎骨動脈に悪影響を及ぼし「めまい」「ふらつき」の原因となると考えられています。
そして、
これらのように、「頸椎不安定状態」を続けると、
頸椎と頸椎の間にある椎間板と言われる衝撃吸収材に無理がかかり続けるようになり「頸椎椎間板ヘルニア」と言われる症状に進んだり、
筋肉も椎間板も衝撃吸収を拒否しだすと、ついには頸椎内部にある脊柱管を支える最後の砦である靭帯が衝撃吸収の役割を担うようになり、それが持続された場合、ついには靭帯が分厚くなることで、脊柱管内部が狭くなる「脊柱管狭窄症」という症状に至ることもあり得ます。
単なるムチウチでも日常生活がつらくなりますが、ここまで症状が悪化した場合相当苦しまなければならないでしょう。このような状態に至る事だけは絶対に避けなければなりません。
では、いかにして、このつら過ぎる症状を治すのか?
まず、当然ながら消炎鎮痛させるための、前述の「(無害)鍼灸ステロイド処置」も行います。
次いで、頸の椎骨と椎骨の間にある関節周囲の鍼灸治療による侵襲刺激を行うことで危険からの逃避反射を誘発させます。逃避反射により自律神経の副交感神経刺激が起こり、筋肉などの末梢組織の血液循環の促進などが誘導され筋肉の緊張が緩みます。
また、鍼の刺し傷によって細胞は自然死(ネクローシス)しますので、直後から組織の修復(体細胞分裂)が起こり始めます。従いまして、遺伝情報に基づく体細胞分裂を起こす際に不可欠なたんぱく質を合成させるのための必要な材料が刺し傷部分に送り込まれなければなりませんので血管を拡張させて血管透過性を亢進させます。この時に筋肉の緊張が取れなければ血管の拡張が抑制されますのでどうしても筋肉は緊張緩和せざるを得なくなるのです。
このように筋肉の緊張を緩和させ同時に、皮膚細胞及び筋肉細胞の体細胞分裂を起こさせ素早く細胞再生を促進させることで、神経の圧迫障害(絞扼障害)を改善させ、脊髄からの末梢神経の出口である椎間孔と呼ばれる部位の周囲の軟らかい組織のむくみを改善させることでも神経の絞扼を解除させます。
ここまでで、筋肉の緊張が取れ、血行が回復し、神経の圧迫も改善してきますので、頸部全体の状態が健康に向かいだします。
筋肉が仕事をできない状態にある時には、骨と骨の間にあるクッションの役割を持つ椎間板や、骨の中を通る脊柱管と呼ばれる部分の内部の靭帯に大変な無理をかけ続けてきた訳ですが、
筋肉の状態が改善すればするほど、自然に力が入るようになりますので、椎間板や脊柱管内の靭帯へかかる圧力が分散されるようになります。そして、頸椎が不安定で頭の位置が定まらなかった病的な状態も改善され、それにより、椎骨動脈への血液循環が正常化するため、脳内への血液の供給も正常化しますので、平衡感覚をつかさどる神経細胞や器官の状態も良くなるのです。
ここまで回復すれば治癒と言えます。
※想像(科学的な根拠はありません)
脳への血液の供給は、2本の頸動脈から枝分かれした内頸動脈と、2本の椎骨動脈により行われ、その4本が脳にあるウイリスの大脳動脈輪に接続し、そこから脳全体に血液を供給しているのですが、ムチウチにより椎骨動脈の循環が悪くなると、頸動脈からの血液供給が主力になるため、頸動脈と椎骨動脈の血管内圧力が変化し、それが微妙に悪影響を与えるのではないかと?そうであるとしたならば、つまり、頸動脈内の圧力が微妙に高まると考えられますので、頸動脈にある「頸動脈洞」呼ばれる血圧調整センサーが圧力上昇を感知して自律神経に対して血圧を低下させる指令を出している可能性もあるのではないかと・・・そして、頸動脈と椎骨動脈の両方とも循環が悪くなり脳内が栄養・酸素不足になる。そうなると今度は血圧をあげろと指令が出され頸動脈内の圧力が高まる。そうなるとまた下げろと・・・・以下繰り返し。つまり自律神経の状態も不安定化し易い状態にあると非科学的に想像できます。
これを仮説としたならば、鍼灸で症状が改善した場合、鍼灸によりこの仮説の病状も治す事ができるという新たな仮説も成り立つのではないでしょうか。
鍼灸治療の頻度について
1)病気の時
基本的には、患者様のストレスにならない範囲での通院頻度で構いませんが、
もし、よろしければ、症状の続く間は、できるだけ毎日行った方が回復は早まります。
県外から通院される方であれば、宮崎市内に宿泊して「一泊二日」や「二泊三日」の集中治療をすることも例として挙げられます。また、1日2回治療を受けられるのも良いでしょう。
回復の状態が良好であれば治療日の間隔を徐々に広げていきます。黙々と鍼灸治療を積み重ねるという方法しか痛み緩和の方法はありませんので何卒ご理解ください。ただし、ムチウチの鍼灸治療では治療後に痛みが返って激しくなることがあります。特に頸部は他の部位に比べて反応が強く出やすい所でもあります。これは実際につらいのですが、それも治療の経過ですので心配はありません。しかし、不安な方には次回の治療時に鍼灸刺激の量を減らすなどして調整をします。不安でなければ、同じ刺激量での治療を続行します。
2)治ったあと
痛みが取れた後は、「4日~14日に1回程度の定期的な治療」をおすすめ致します。
しかし、定期的な治療をするのかどうかはご本人様のご都合に沿って、ストレスのかからない範囲内で取り組んでいただければと存じます。
用語説明
★ 椎間板
椎間板は頸椎から仙椎までの椎体を連結し、脊椎の安定性を維持し支持組織としての役割を担っています。またそればかりではなく椎間板は運動性を担い、荷重や衝撃の吸収、緩衝といったクッションの機能もはたしています。
この椎間板は大きく分けて髄核と線維輪からなりたっています。髄核とは水分の豊富なゲル状の組織で軟骨細胞・膠原線維・水分の豊富なムコ多糖蛋白複合体(プロテオグリカン)からなります。また線維輪は髄核を包み込むように存在し、脊椎骨を強固に連結しています。膠原線維を含む線維軟骨が主成分で弾性に富む丈夫な組織です。
★頚動脈洞圧反射(けいどうみゃくどうあつはんしゃ)
頸動脈の血圧が上昇すると、頸動脈洞の圧受容体が圧上昇を感知する。その情報は舌咽神経を通して延髄に伝えられる。延髄からの指令で迷走神経(副交感神経)の活動が優位になり心臓の動きもゆっくりになる。ゆえに血圧も低下し、脳へ行く血液と酸素も減少し脳の活動が低下する。また、副交感神経が優位になることで身体活動が抑制されるので、動くのがしんどくなる。よって、仕事中等に仮に急に副交感神経が優位になるなどの自律神経失調状態が発生した場合、仕事の効率が落ち込むことは言うまでもない。
ムチウチを治すための3点セット
- 鍼灸治療(超高度鍼灸テクニック)
- なぜムチウチになるのかの「真実の理解」
- 院長声明に記載している生活上の注意点を守ること
※ 院長執筆・独自資料は、治療終了後、受付にて直接「手渡し」させていただきます
※ ③の院長声明文は、ネット上に公開する事など絶対にあり得ない
「研究に研究を重ねて完成した重要資料」です