このページは、論文「頭痛に対する鍼灸治療の効果と現状」に基づいて、高野義道が執筆しました。
一般に知られていない論文に光をあて、研究者の努力を鍼灸臨床に落とし込むと同時に、高野鍼灸リラクセーションの現状の施術方法との差異を比較検討し、再構築し、医学的根拠のある透明な鍼灸施術を提供する目的で書きました。
この治療法は、医師(国家資格)、はり師(国家資格)の2者しか行うことができません。
患者様のために、この医学的な根拠に基づく有効な頭痛の治療を、鍼灸師はもとより、医師にも活用していただければと思っています。通常の薬物療法と鍼灸の併用をすることで、頭痛治療の有効性が上昇するデータも示されていますので活用しないのはもったいないと思われます。
また頭痛の患者様も、医学的に有効な治療の一つに鍼治療があると事を知っていただければ、安心して、施術を受けることができるのではないかとも思います。
鍼灸師 高野義道
(引用開始)
頭痛に対する鍼灸治療の効果と現状
まずは結論
有効
具体的には、緊張型頭痛、片頭痛などの一時性頭痛に対しての臨床効果が報告されており、特に「episodic」な頭痛に対して有効と示唆されております。
※episodicな頭痛とは、発作として現れ4~72時間持続し一度治まってまた起こる頭痛のことです。
論文の参照元
頭痛に対する鍼灸治療の効果と現状
熊本市民病院 神経内科・地域医療連携部 橋本洋一郎
慶応義塾大学 医学部 神経内科 鳥海春樹
埼玉医科大学 東洋医学センター 菊池友和
明治国際医療大学 基礎鍼灸学講座 篠原昭二
東京大学医学部付属病院 リハビリテーション部 粕谷大智
全日本鍼灸学会誌,2014年64巻1号,p18-36
参照元 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/64/1/64_18/_pdf/-char/ja
論文が示す頭痛患者データ
国内の頭痛患者数(一時頭痛)
片頭痛 約840万人
緊張型頭痛 約2200万人
群発頭痛 約10万人
と言われています。
これを含む、三叉神経性頭痛、自律神経性頭痛、その他一時性頭痛の慢性頭痛の総数は3000~4000万人にもおよび高血圧有病数に匹敵するといわれています。
片頭痛は成人女性に多く、なかでも妊娠可能な女性が特に多い。
また、市販薬の飲みすぎで、薬物乱用頭痛を合併している人も多い。
薬物乱用頭痛は緊張型頭痛のような症状ですが、多くは前兆のない片頭痛をベースにした慢性連日性頭痛のことが多い。
一時性頭痛は、頭痛全患者の80%以上を占める。
論文が示す、危険な頭痛の見分け方
いつもと同じ頭痛なら、片頭痛や緊張型頭痛などの一時性頭痛ですが、いつもと違う頭痛で、二次性頭痛の可能性があるようであれば、命の危険性のある頭痛かもしれないので、急いで医師の診察を受けなければなりません。
論文が示す日本人の片頭痛の見分け方
- 動作による悪化
- 吐き気
- 光過敏
- 臭過敏
- この4つうちの2つ以上が「時々」あるいは「※1半分以上」あれば片頭痛の可能性が高い
- ※1 論文には半分以上とあるが、半日以上の間違いではないかと思われます。
- その他に、
- ズキズキ脈打つ
- 動くと痛みひどくなると寝込む
- 視覚以上が起こる前兆がある
- 肩こりがひどくなる前兆がある
- 等を伴う事もある。
論文が示す群発頭痛について
- 片目の奥に激痛がある
- 涙が出る、目が赤くなる、まぶたが垂れる、まぶたがむくむ
- 鼻水、鼻づまり
- おでこや顔に汗をかく
- 頭痛が15~180分間続き、これが一定の期間中に、2日に1回~1日に8回の幅で同じ時間に起こる
- 一定の期間中に飲酒すると激痛が誘発される
- 慢性頭痛の中では、最も痛い
論文が示す緊張型頭痛
- 締め付けられるような頭痛(片頭痛にみられるときもある)
- 日常生活への支障は少ない
- 運動により悪化しない
- 30分から7日間持続する
- 慢性の場合3カ月間にわたり毎月15日痛い。1年では180日痛い
- うつ病頭痛の場合は早朝や午前中に強くなりやすが、緊張型頭痛では午後や夕方に強くなりやすい。
論文が示す片頭痛予防(もちろん緊張型頭痛も含む)の生活改善策
- ストレス・過労を避ける
- 肩のこらない生活を心がける
- 肩こりの自覚のない人も自覚していないだけで凝っている可能性があるので、ちゃんと意識する
- できるだけ気を使わないようにし、イライラもしないようにする
- 生活を規則正しくする
- 食事をきちんととる
- 睡眠を十分にとる
- 寝すぎはだめ
- 休みを含めて毎日同じパターンで生活する
- 頭痛を誘発する原因を避ける
- うつむき姿勢は頭痛を誘発するのであまりよくない
- 筋肉をリラックスさせる
- コーヒーなどのカフェインを避ける
- 鎮痛薬は必要分のみの服用にとどめ薬物乱用頭痛に気を付ける
頭痛のABCDE分類
- A(acute) 様々な急性頭痛
- B(bound) 慢性と急性の両方を持つ頭痛
- C(chronic) 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などの慢性反復性頭痛
- D(daily) Cが三カ月以上続く連日性頭痛で慢性片頭痛や慢性緊張型頭痛を含む。薬物乱用頭痛、群発頭痛は除く
- E(excess) 3カ月以上続く薬物乱用頭痛。実際の現場ではこの頭痛も多い。慢性頭痛で困っている患者様や頭痛の治療がうまくいっていない患者様には、痛み止めの飲みすぎがないかどうかをしっかり聞く必要がある。
論文が示す、片頭痛の病態と鍼の作用機序
緊張型頭痛は、頭痛を引き起こす頭部の緊張した筋肉に鍼をすることで緩和される。
これは頭や首への鍼灸施術が、脳血管系に影響を及ぼすからだとの報告が多い。そして、この影響が片頭痛に対する鍼灸効果の機序に関連するものとしての注目に値する。
三叉神経領域にできた「こりこり(NHKで数年前にトリガーポイントのことをコリコリと表現していた)」に何らかの処置を加えると片頭痛発作の頻度が低下することは知られています。
近年になり、この論文の著者である橋本らは、三叉神経系への慢性的な刺激が「片頭痛発作の前兆に関与する大脳皮質拡延性抑制(CSD)の発生閾値を低下させ、また発生時間を遷延させることを見出した」というわけです。
はっきり言ってかなり難解ですが、簡単に言うと、三叉神経領域で発生した慢性的刺激が片頭痛発作の発生に影響を及ぼすことが医学的に分かったという意味です。
したがって、片頭痛の発生時に頭や首のコリコリ(トリガーポイント)に鍼をすると、片頭痛発作を起こさせなくするという経験的事実の裏付けになる根拠が成立するわけです。
ところで三叉神経系に影響を与え、片頭痛発作の誘発させるトリガーポイントとは何なのですか?という事ですが、川喜田らによると、局所の炎症に伴う浮腫と、ポリモーダル受容器という神経の鍵穴へ、カギが刺さったような状態ともいえる「感作」が重要であるとしています。
トリガーポイントは、筋肉だけでなく、皮膚、腱、靭帯、骨膜などを含む組織(ファシア)にもおよび、最近ではファシアの癒着が折り重なるように見られることから「ファシアの重積」とも呼ばれ始めています。
このトリガーポイントの存在が、三叉神経を活性化させる慢性的な刺激物であり、片頭痛を悪化させる要因としてはっきりと位置付けられる重要なものになったというのがこの医学的根拠です。
論文で示された、頭痛に対する鍼灸施術の有効性に関する結果
結果を導き出すための算定条件
片頭痛と緊張型頭痛について以下の文献を検索
- 2009年 コクラン・レビューによる「片頭痛」と「緊張型頭痛」
- MEDLINE 英語論文(2009年1月~2013年6月)
- 医学中央雑誌 日本語文献(2006年6月~2013年6月)
- この検索結果を、メタアナリシスおよびRCTについて検索。
- 組み入れ基準として、対象は国際頭痛分類に準拠し「一時性頭痛」「片頭痛」「緊張型頭痛」に分類してあり「鍼」「灸」を用いて施術を行ったメタアナリシスまたはシステマテックレビューおよびRCTの論文について分析。日本の鍼灸師が行える範囲で鍼通電療法やマニュアル鍼治療、灸頭鍼や円皮鍼は含めて分析。
メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。メタ分析、メタ解析とも言う。ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは、根拠に基づく医療において、最も質の高い根拠とされる[1]。
メタアナリシスという言葉は、情報の収集から吟味解析までのシステマティック・レビューと同様に用いられることがある[2]。厳密に区別する場合、メタアナリシスはデータ解析の部分を指す[2]。
参照元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』:メタアナリシス
解説はコクランレビューにおけるクリニカルクエスチョンに基づき行う
- 鍼療法が無治療またはルーチン・ケアよりも有効であるか?
- 「偽」(プラセボ)鍼療法よりも有効であるか?
- その他の介入と比較し有効であるかどうか?
- に加えて、日本頭痛学会と英国NICE(英国国立医療技術評価機構)の見解を追加。
- さらに鍼灸治療の治療方法や治療部位、回数や頻度についてを追加。
- これらを文献的に考察し、まとめたものが、この論文です。
一次性頭痛に対する鍼灸の有効性の証明結果
一次性頭痛の種類
国際頭痛学会による国際頭痛分類 第2版(ICHD-2)
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経神経性頭痛
- その他一時性頭痛
ヨーロッパにおける一次性頭痛の鍼治療に関する大規模研究
治療3カ月の頭痛減少日数(対象人数15,056人 RCTおよび非ランダムコホート)
- 通常ケア群に鍼治療を追加した群 8.4日→4.7日に減少
- 通常ケアのみ群 8.1日→7.5日に減少
この研究では通常ケア群に鍼治療を加えた方が、格段に頭痛日数が減少することが明らかになりました。
治療1年後の頭痛減少日数(対象人数401人 RCT)
- 通常ケア群に鍼治療を追加した群 15.6日→11.4日に減少
- 通常ケアのみ群 16.2日→13.6日に減少
この研究では通常ケア群に鍼治療を加えた方が、有意に頭痛日数が減少することが明らかになりました。
一次性頭痛の予防効果を検討したメタアナリシス
対象人数1,412人の片頭痛及び緊張型頭痛を含めて解析した結果、シャム鍼よりも予防効果が有効であると解析された。
日本の慢性頭痛のガイドライン
- 一時性頭痛の急性期治療及び予防に対する鍼治療、経皮的電気(鍼通電)刺激はRCTがなされており有効性が証明されている。試験の量等がまだ少ないため、さらなるエビデンスの集積が必要。
ガイドライン上の慢性頭痛に対する推奨グレードはBである。
対象患者は、
- 薬物療法以外の治療を希望する患者。
- 薬物治療に耐えられない患者。
- 薬物治療に禁忌のある患者。
- 薬物治療に反応しない患者。
- 妊娠または妊娠の可能性のある患者。
- 薬物乱用頭痛の既往のある患者。
- あきらかなストレス下にある患者。
となっている。
しかしながら、ヨーロッパにおける一次性頭痛の鍼治療に関する大規模研究では「通常ケア群に鍼治療を加えた方が、格段に頭痛日数が減少する」となっている。
片頭痛に対する鍼灸治療の有効性の証明結果
- 片頭痛の発作予防に対し、通常の薬物療法、または、無治療に鍼治療を追加すると、有意に片頭痛発作の現象が認められる。
- 片頭痛の予防に対する治療反応率では、2~4か月後は標準薬物と比較し鍼治の方が高い。しかし、6カ月後以降は、鍼治療と薬物療法は同等の効果を示した。
- 片頭痛の頻度は、2か月後、4か月後、6か月後と鍼治療が薬物治療に比べて有意に減少した。
- 真の鍼+偽の予防薬 VS 偽の鍼+真の予防薬の比較
片頭痛減少日数
- 4週後 真の鍼+偽の予防薬 VS 偽の鍼+真の予防薬の比較 = -4.1日 VS ―1.9日(P<.001)
- 16週後 真の鍼+偽の予防薬 VS 偽の鍼+真の予防薬の比較 = -4.1日 VS ―2.0日(P<.001)
片頭痛治療の反応率
- 4週後 真の鍼+偽の予防薬 VS 偽の鍼+真の予防薬の比較 = 59% VS 40%(P=043)
- 16週後 真の鍼+偽の予防薬 VS 偽の鍼+真の予防薬の比較 = 56% VS 37%(P=042)
と、片頭痛減少日数、治療反応率ともに、真の鍼の有効性が証明された。
また、限定的であるが、慢性片頭痛に対しトピラマートと鍼治療を比較した結果、鍼治療の方が有意に頭痛日数減少を示した報告もある。
なお、片頭痛発作の予防に関し、他の非薬物療法と鍼治療の比較効果の結論は出ていない。
片頭痛発作時(急性期)の痛みの鍼治療は有効であるが、トリプトタンより効果は少ない。
真の経穴(A) VS 経絡上の非経穴(B) VS 非経絡上の非経穴(C)の片頭痛発作減少の比較(n=169)
- 30分後 有意差なし
- 2時間後 (A)vs(B)vs(C) = -0.7 vs -0.3 vs -0.2(P=0.006)
- 4時間後 (A)vs(B)vs(C) = -1.0 vs -0.5 vs -0.1(P=0.012)
と、真の経穴(本当のツボ)へ鍼刺激をすると片頭痛が減少することが明らかになった。
さらに24時間後(n=150)では真の経穴の方が有意に減少したと報告されている。
鍼治療(真の鍼群 VS 偽の鍼群)の前と24時間の頭痛減少のVASの比較
- 真の鍼群 治療前 VAS 5.7cm → 24時間後 VAS 3.3cm
- 偽の鍼群 治療前 VAS 5.4cm → 24時間後 VAS 4.7cm
真の鍼群も、偽の鍼群も減少しているが、真の鍼群の方がより有意に減少することが証明された。
右側頭部に片頭痛発作中の患者3群に対しての比較検討
- 真の鍼+2/100Hzの鍼通電群
- コントロール鍼+2/100Hzの鍼通電群
- 真の鍼又はコントロール鍼への鍼通電なし群
3群とも片頭痛発作は減少する。効果は3<2<1と、1の真の鍼+2/100Hzの鍼通電群の効果が大きく、片頭痛が有意に減少することが分かった。
急性片頭痛発作中患者108名に対しての3群の比較検討
- 鍼群
- スマトリプタン注射群
- プラセボ注射群
効果は3<1<2と、2のスマトリプタン注射の効果が一番大きいことが分かった。
しかし、副作用は、3<1<2と、2のスマトリプタン注射の副作用が一番多いことも分かった。
つまり、鍼治療はスマトリプタン注射に劣るものの効果はあり、副作用はスマトリプタン注射より少ないとの結果となった。
英国の片頭痛のガイドライン
標準的な治療で期待すべき効果が得られない場合は、鍼治療を10回(5~8週間)考慮しても良いと推奨されている。
緊張型頭痛に対する鍼灸治療の有効性の証明結果
- 711例を解析した結果、薬物療法または無治療に、鍼治療を追加すると、反応性向上、頭痛日数減少ともに有効性が確認された。
- 緊張型頭痛の予防に対して、真鍼と偽鍼を比較した(n=723)結果、2か月後1.24 → 6カ月後1.18 と有意に頭痛日数が減少した。
- 日本頭痛学会ガイドラインでも、鍼灸でも有用なものは推奨されると記載されている。
- 英国NICEのガイドラインでは予防的に鍼治療を10回(5~8週間)考慮しても良いと推奨されている。
論文て示された一時性頭痛の有効な鍼治療の方法
緊張型頭痛の鍼治療
43の論文を120の因子について検討した結果
- 治療回数は週1回よりも週2回の方が有効。
- 単刺術よりも30分の置鍼の方が有効。
- 置鍼術よりもマニュアル鍼の方が有効。
- マニュアル鍼よりも、鍼通電療法の方が有効
片頭痛の鍼治療
前兆のない片頭痛35例を対象にRCT比較試験を行った。
- 耳鍼よりも、体鍼の方が有効で、片頭痛の日数、QOLともに有効性が確認された。
- なお、この論文では、以下の経穴を使用。
- ST8、ST6、GV20、GB20、TE5、SP6、LR3
(引用終了)
論文を分析した高野義道の考察
この論文は 、メタアナリシスまたはシステマテックレビューおよびRCTについて解析されており、信頼性は高いと思われます。 ※ 詳細は、メタアナリシスや症例報告新聞記事をご参照ください。
一次性頭痛でも、特に緊張型頭痛と、片頭痛の発症中の鍼灸治療と、発症を予防する予防的鍼灸治療について、効果があると確認されたものです。
また、東洋医学の経絡(線路のようなもの)・経穴(駅のようなもので、一般的にはツボいいます)に確実に鍼を打つことが重要であることも示されました。
最近では超音波エコーガイド下に刺鍼できるようになっています。
当該経穴を確実に取穴したうえで、その内部をエコーで観察し、ファシアの重積などの問題が見つかればより確実な鍼治療になるのではないかと考えられます。
緊張型頭痛では、鍼通電が一番効果が上がると示されました。
鍼に通電する場合は、鍼をある程度深く刺入しなければなりませんので、鍼に慣れていない人や、怖い人にいきなりこの方法を実施するとかえってストレスになる可能性もあるので、まずは、置鍼から始めると良いかもしれません。置鍼時間は30分となっています。
鍼を打ち終わってからの30分の置鍼は結構長いので、負担が大きいかもしれません。
鍼を打ち始めてから、抜針完了までを30分程度とすれば負担はそう大きくないと思われます。
そうして慣れてきて、頭痛の治まりがいまいちであれば、マニュアル刺激&置鍼、鍼通電を加えていけば良いと考えられます。
片頭痛では選択された経穴からして仰臥位(仰向け)での治療になろうかと思われます。ただ、もし貧血症や低血圧症でなければ座位で行うのも良いかもしれません。
片頭痛で、肩こりなどの頸部の筋緊張があるようであれば、緊張型頭痛に使用する真の経穴にも施術を加えた方がよいと考えられます。その場合は腹臥位(うつ伏せ)での施術が基本となります。従いまして、腹臥位の場合は論文の頭維と太衝の刺鍼には工夫が必要になります。
この論文では、頭痛の薬物治療との併用も有効である事から、現在、医師の処方する消炎鎮痛薬や、薬剤師や登録販売者が販売する一般用医薬品を服用されている方でも、鍼灸も併用してみると良いかもしれません。
日本の慢性頭痛のガイドラインでの鍼灸適応患者は、
- 薬物療法以外の治療を希望する患者。
- 薬物治療に耐えられない患者。
- 薬物治療に禁忌のある患者。
- 薬物治療に反応しない患者。
- 妊娠または妊娠の可能性のある患者。
- 薬物乱用頭痛の既往のある患者。
- あきらかなストレス下にある患者。
となっていますが、 ヨーロッパでは多くの人々が薬物療法と鍼灸治療を併用し効果を上げていることが明らかになりっていることから、8番目に「薬物療法と鍼灸の併用を希望する患者」を入れても良いのではないかとも考えられます。ただし、薬物乱用には注意が必要ですから、日本の場合は、医師(国家資格)、薬剤師(国家資格)、登録販売者(国家資格)に相談して服用される姿勢が望まれます。
高野鍼灸リラクセーションの頭痛鍼灸治療(再構築)
1.緊張型頭痛
頸肩部、背部の筋緊張している部位でなおかつ経絡上の真の経穴に施術します。
治療部位と経穴については従来通りですが、論文の結果より、さらにより一層の厳密な取穴をする必要があります。
鍼治療の方法については、この論文と当院の従来の治療方法に差異はありません。
ただし、当院の場合は、鍼にプラスして、温灸と電気的灸頭鍼を置鍼中に追加しています。
当院の置鍼の種類は以下に分類されます。
- 鍼を刺入し、マニュアル操作をせずに置鍼をする方法
- 鍼を刺入し、マニュアル操作をせずに置鍼し、その鍼に通電ををする方法
- 鍼を刺入し、マニュアル操作をした後に置鍼する方法
- 鍼を刺入し、マニュアル操作をした後に置鍼し、その鍼に通電ををする方法
と4段階に分かれています。
そして
- 症状の程度
- 自律神経の状態
- 体力の状況
- 鍼の経験の有無
- 経験がない場合の鍼が恐いか恐くないかの状況
- 経験がない場合の精神的緊張の状況(恐くなくても緊張することがある)
- 経験がある場合の鍼の好き嫌いの状況
- 経験がある場合の鍼の刺激の好き嫌いの状況
- 血圧
- 貧血の有無
などの「置鍼方法の4段階」+「患者様の状況10段階」の中から最適な組み合わせを選択します。
そして、その組み合わせに応じて、
- 鍼の太さ
- 鍼の長さ
- 温灸の種類
- 温灸の温度
- 刺入深度
- 刺入本数
- 温灸数
を選択します。
鍼の刺入は、基本的には従来の方法で行いますが、希望や必要性がある場合は、超音波エコーガイド下に経穴の内部を見ながらリアルタイムに刺入することもあります。
ただし、マニュアル鍼の刺激が好きで強い刺激をした場合に鍼通電をすると刺激が強すぎてオーバードーゼに至ることがありますので、その場合は鍼通電をしない方が良い場合もあります。
片頭痛・群発頭痛
- 基本的には、緊張型頭痛と同じ治療をします(頸肩部に柔軟性があり血行が良い場合は必要ないかもしれません)
- 論文経穴片頭痛13点を追加し片頭痛の鍼灸治療をブラッシュアップします。
- 頭痛が激しく、頭部~肩にかけて熱を持っている場合は、頸肩部の電気的灸頭鍼は除外します。
- 頭部~肩にかけて熱を持っている場合はアイシングを追加する場合もあります。
- 自律神経が不調の場合は、自律神経に対する鍼治療をします。西洋医学的解釈、東洋医学的解釈、長野式、沢田流、柳谷式一本鍼伝書など様々な文献の施術法を解析しブラッシュアップした高野式鍼灸を追加します。
- 5の場合は、黄帝内経難経六十九難の鍼(主に補法)を追加する場合もあります。この方法では東洋医学的脈診により経穴を選択します。
論文経穴片頭痛13点
- 左右頭維(ずい) ST8
- 左右頬車(きょうしゃ)ST6
- 百会(ひゃくえ)GV20
- 左右風池(ふうち)GB20
- 左右外関(がいかん)TE5
- 左右三陰交(さんいんこう)SP6
- 左右太衝(たいしょう)LR3